中二病ノートから振り返る歌詞の書き方

こんにちはゆうりです。今回は歌詞のお話です。

私は今まで500曲以上の歌詞を書いてきました。中にはバンドに提供したり、プロダクションに売ったりと、自分での利用以外の歌詞も沢山あります。

作曲と比べたらまだまだ数が少ないです。最近はインスト曲メインの活動になっているので尚更ですね。

そんな私が作詞を始めたのは中学一年生の頃です。多感な時期にありがちな、大好きな音楽に影響を受けて自分もやってみたい!と思ったのがきっかけです。

全ては「中二病ノート」から始まった

有名ブロガーやしろあずきさんの中学生時代、自分が格好いいと思った世界観をノートに書いていたという大好きなお話があります。やしろさんは所謂「中二病」で、闇の騎士や魔物だったり、独自のファンタジー世界の設定がしたためてあり、大人になった今となっては中学生特有の「痛い時代」という黒歴史の詰まったノートとして人気ですね。(大ファンです)

私もそれに違わず学生時代は中二病全開でした。当時好きなアーティストはL’Arc-en-Ciel・黒夢・Janne Da Arcと言えば大体どんな嗜好だったかわかります。彼らの「闇」「幻想感」を感じさせる雰囲気に陶酔していました。

私の「中二病ノート」は、読んだ小説や漫画から闇を感じる言葉を抜粋するというものでした。コクヨのノートがみっちり埋まる位、そこには格好いい(と当時は思っていた)言葉が書き連ねてあります。内容は、

「闇のカーニバル」「カタストロフィ」「隻眼」「鎮魂歌(レクイエム)」等など…あいたたた。

そんな言葉を使って当時書いていた歌詞のサビを抜粋してみましょう。

あまねいた闇は全てを染めてゆく 貴女だけは乙女のまま 穢れないでいて

痛くて悶え死にそうです。

が、冷静に振り返ってみてその心意気やよし、と中学生の私を褒めてやりたい気にもなります。自分の世界に没頭して何かを生み出そうとする事は大人になると中々できません。

そんな事をしている内に謎の自信も生まれました。間もなくその謎の力を信じて応募したオーディションで大人を差し置き受かったのも「作詞作曲をする中学生」という大きな特徴があったからと言われました。自分の全てが肯定されたかのようで嬉しかったです。

ところが、現実はそんなに甘いものではありませんでした。

ボツを食らった20曲

オーディションを通過した某会社での事です。「まずこの曲に合った歌詞を書いて下さい」そう言われた私は自信満々に中二病ノートを使って歌詞をしたためました。無敵だと思っていたので、自分の思うがまま突っ走りました。20パターン近く書いて送ったと思います。そして、担当の方からの返事は

「とても若々しいね。だけど、残念ながらこれでは売り物にできません」

という衝撃的な言葉でした。

格好いい言葉をあれだけ並べたはず…。そう、並べただけなのでした。私は会社に出向き、作家さんを交えて相談をしました。

歌詞は誰に向けて、何を伝えるのか。

私の歌詞は只の「言葉の羅列」でした。愛だ、恋だ、闇だ、辛いだ、それでも好きだ、というような一方的なものでした。

それを読んだ人が感じるのは、上辺の言葉を借りものにした後付けの世界観です。

自分では納得出来ても、他の人からしたら壁に向かった独り言を聴かされているような気持ちになるでしょう。歌詞というものは、例え独り言でも壁ではなく人に向けて喋るのです。

共感できる世界観の構築

「言葉はさておき、まずシチュエーションを考えて」と言われました。歌詞の主人公はどんな人なのか、男か女か、誰とどんな所にいるのか。主人公は何を訴えたいのか。

散々悩んだ挙句「自分からもう心が離れている恋人と一緒にいる女性。別れ話を切り出される間際」というシチュエーションに決めました。

物語の構成・主人公の気持ち

まずは物語のあらすじと主人公の気持ちを文にします。ここでは「言葉」としての歌詞の要素は置いておきます。当時のメモです。

「あなたの態度を見ていれば私から心が離れているのがわかる。

最初あなたは永遠だって言っていたのに。お互い微妙な関係が続いていた。ついにあなたから別れが切りだされた。覚悟していたはずなのに、現実に直面した途端私は動揺し、何も手につかない。お願い、一人にしないでよ。」

物語から歌詞へと落とし込んでゆく

ここから歌詞を構築する作業が始まります。歌詞は簡潔でわかりやすくする為、物語より大幅に言葉を削って、尚且つ全ての意味を含んだものに仕上げて行きます。(原文ままだと契約上の問題になるので近いイメージの言葉で代用します)

「あなたの態度を見ていれば私から心が離れているのがわかる。最初あなたは永遠だって言っていたのに。」『またわざとらしい笑顔 永遠だって言ってたくせに』

(また、でそれが日常的であるという事が伝わる。ずっと微妙な関係であるという意味を含ませる。)

「ついにあなたから別れが切りだされた。覚悟していたはずなのに、現実に直面した途端私は動揺し、何も手につかない。」『突然の言葉 戸惑って 割れたグラスで指を切った』

(前述の日常の崩壊を単純な言葉で。主人公がそれにどれだけ慌てているのか動作で示す。グラス=2人きりで飲み物を飲んでいるシチュエーションを連想させる。)

ここから主人公の気持ちの内側を探って抽象的な歌詞もプラスしてゆきます。

『くすんだ風を纏って笑う君』(彼の笑顔はもう過去のもので、今ここに戻らない)

『涙で紡ぐ旋律白いまま』(あなたの事を歌うけれど、虚無しかない)

まとめてみます。

またわざとらしい笑顔 永遠だって言ってたくせに

突然の言葉 戸惑って 割れたグラスで指を切った

お願い 一人にしないで

くすんだ風を纏って 笑う君

涙で紡ぐ旋律 白いまま

結果この歌詞をベースとして、英語を交えたお洒落な歌詞が出来ました。

実際は歌に乗せた場合の発音などを考慮した手直しが入っていますが、単なる言葉の羅列の歌詞ではなくストーリー性や場面転換などを交えたわかりやすい歌詞が出来上がりました。

歌詞は共感と共にある

前出の歌詞が乗った歌をリリースした後、「失恋した時に聴いて好きになりました。切なくて儚い雰囲気が好きな歌詞です。」と嬉しいおたよりを頂けました。主人公と似た気持ちの人に響いた、という手ごたえがありました。歌詞は言葉を通して、誰かと繋がるものなんだと深く実感した思い出です。

海援隊の「母に捧げるバラード」という曲があります。歌詞を書かれた武田鉄矢さんは公演でこの曲を聴いて泣きだすお客さんに対して、最初「俺の歌詞(台詞)が素晴らしいから感動してるんだ」と思っていたそうです。しかしある日、お客さんから「あんた自体は私の感動に関係ないんだ。歌詞に共感して、故郷の母を思い出して泣くんだ。」と言われてしまいます。その時、武田さんは自信過剰であったとハッとしたそうです。

物語と言葉が手を取り合って、歌詞が生まれる

ここまで誰に何を伝えたいかが大事、とも言ってきましたが作詞の世界はそれに留まりません。勿論それを意識した上で刺激的な言葉を含めて行くのもとても良い方法です。

例えば椎名林檎さんはもっぱら辞書と向き合って歌詞をひねり出していたそうです。彼女の詞には変わった言葉、言い回しなど聴き手に新しい衝撃を感じさせるものがふんだんに盛り込まれていますね。

L’Arc-en-CielのHydeさん作詞の「花葬」は「ばらばらにちらばる花びら 雫は紅」など視聴者の視線(イメージ)を物体に誘導しています。まるで色を塗って描いているような、絵画的要素がある歌詞です。かつてご本人が絵を専攻されていたからかもしれません。

ブルーハーツの「リンダリンダ」はナンセンスという手法が使われています。「意味のわからない言葉でも心地よい」と感じさせる手法です。

こういった意味では実は「中二病ノート」は今でも活躍しています。

聴き手のイマジネーションを膨らませる道具としてやはり単語の力は強いです。物語、それを増幅させる単語、言葉の流れなどを操って素敵だと思う歌詞を書けた時。そして共感して貰えた時の喜びは測り知れません。

心理学的要素もある

作詞をしてきて参考にしたものは様々ありますが、書き手の方にお勧めのものは心理学の本です。

意外かもしれませんが、どんな言葉が相手に影響を与えるか知る事ができます。

ちょっとずるいやり方だと脅したり怖がらせたりする「詐欺」の本もお勧めです。歌詞には聴き手が注意しないとわからないようなトラップが沢山仕込まれています。

その謎解きにも心理学をさらっておくときっと役立つ事でしょう。

おわりに

歌詞の世界は本っ当に深いです。飛び込んでみると色んな発見があってとても面白いです。ここでは書ききれない事も沢山あるので最後にお勧めの本を一冊ご紹介します。

作詞少女~詞をなめてた私が知った8つの技術と勇気の話~

この一冊で作詞に関する知識が一気に吸収できます。何より単なるテクニックとしての本ではありません。作詞をする心構えなども身に付く一冊です。これから始めてみたいという方は必読です。ライトノベル感覚で読める所も良いです。このブログにもちょろっと参考にさせて頂きました。

当サイトでは歌詞のご依頼も承っておりますのでお気軽にどうぞ!

ゆうりでした。ありがとうございました。

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